天気と鍼灸
先日梅雨入りが発表され、しばらく雨の予報が続きますが、「雨の日は古傷が痛む」「古傷が痛むと雨」などといった言葉を一度は耳にしたことがありませんか?
また古傷に限らず、頭痛や腰痛など天候で体調が左右される方も多く見受けます。
実際に、国内では2009年に気象病外来・天気痛外来が誕生し、年々天候によって不調を訴える人も増えているようです。
1.「気象病」「天気痛」とは?
天気の変化と病気の関係は昔から知られており、気圧や湿度などの気象要素から悪影響を受けるものを「気象病」と総称されています。中でも天気が崩れるときに、慢性的な痛みだけではなく、頭痛や神経痛など様々な痛みを起こすのが「天気痛」と呼ばれています。
2.痛みを起こす原因
気象の変化の中でも、主に気圧の変化が身体に大きな影響を与えます。
気圧が下がると、耳の中にある内耳(ないじ)と呼ばれる部分が感知し、その情報を脳に伝えます。情報を受け取った脳の一部が、交感神経活動を亢進させ、ノルアドレナリンというホルモンの分泌を促します。そしてノルアドレナリンが血中を通り、痛みを感じる神経を刺激することで、痛みを引き起こします。
また、交感神経が亢進することで自律神経のバランスが乱れ、身体に様々な不調をきたすこともあります。(自律神経の記事はこちら)
3.なぜ古傷が痛むのか
普段、私たちの身体は、気圧が低下しても痛みを感じることはほとんどありません。
しかし、古傷や炎症などが存在する部位には、正常では存在しない交感神経に反応するセンサーが存在しているため、気圧の変化でも痛みを感じやすくなっています。
さらに交感神経活動の亢進により、血流の低下や筋緊張が高まり、発痛物質が蓄積されることで痛みが強くなります。
そのため、古傷を抱えた人は、天気の変化に敏感になるようです。
4.天気痛と鍼灸
天気痛の原因は、気圧の変化による交感神経の亢進によるものが多く、例えば更年期の方など、自律神経のバランスが日頃から崩れやすい方は影響を受けやすくなっています。(※更年期の記事はこちら)
また、天気の変化によって元々持っている痛みが悪化する場合、その痛みの原因を治すことが天気痛の治療につながります。
鍼灸治療は自律神経の不調による症状や、様々な痛みに対してアプローチできます。天気痛でお困りの方や、慢性的な痛みでお困りの方はご相談ください。
<参考資料>
1)文献:佐藤純「気圧変化と痛み」
2)著書:伊藤和憲「痛み・鎮痛の基本としくみ」
(文/上加世田裕也)